空港迷走パニック(1) -モスクワ-
ヨーロッパ方面に旅行に行くとき、航空会社の選択はいろいろありますが、私たちはやはり安さ一番ということで、
アエロフロートを選びました。アエロフロートといえばロシアの航空会社であり、モスクワ経由ということになります。
そこでせっかくモスクワに立ち寄るなら、市内のホテルに泊まって少しでも街の雰囲気を楽しむことにしました。
到着後、機内から出てまずは入国審査かなと思っていたら、出てすぐのところに係官がいてパスポートを見て誘導しています。
なんだろう。こういうケースは初めてだなと思って隣にいた日本人に話をすると、
日本人「いやぁ、モスクワの空港は来るたびに手続きが変わるからね。よくわからないんですよ」
私「そうですか。。。」
数人の係官の前にみんなが列を作って、順番にパスポートを見せています。なんとも要領の悪いことだと思いながらも
列に並びます。ようやく私たちの番がきたので、パスポートと航空券を提示すると、それを係官がちらっと見ていきなり
パスポートの方を回収し、後ろの待合所のようなところを指差して、そこで待てと指示します。
えっ。どういうこと?わけがわからずちょっと慌てて係官に、
私「え?どういうこと?パスポートは?」
係官(すでに次の人のチェックをしながらむずかしい顔して)「心配ない、とにかく向こうで待って」
私「しかし。。。」
係官「はい、次の人」
うーん。取り付く島もない。なんて愛想の悪い係官だ。しかしよく見ると同じように、パスポートを回収され待てと
指示されている人もいるので、しかたなく私たちも指示された場所で待つことにしました。
同じ仲間には先ほど話をした日本人もいます。
私「これは何なんですかね?」
日本人「いやぁ、私も今回のケースは初めてでわかんないですね。とにかく係が来るまで待ちましょう」
ということで、ヤキモキしながら待っていると別の係官がやってきて、自分の後についてくるようにというような
ことを言っています。一同ぞろぞろと別の場所へ移動です。そしてまた別の待合所のようなところに来ると、
そこで待てと指示して去っていきました。うーん。いつまで待てばいいんだ。しかし他にどうしようもなく
先の日本人としばらく雑談です。
私「どちらへおいでですか?」
日本人「いやぁ、これから仕事でテヘランへ行くところなんですよ。もう4度目なんですがね」
私「へぇー、テヘランですか。いいですね。私も行きたいですよ。いつもモスクワ経由で行かれるんですか?」
日本人「いやぁ、だいたいはそうですね。だからこの空港は何度か利用しているんだけど、毎回手続きが変わるんで、
ほんとわかんないですね」
などと、雑談して暇をつぶします。
私「このあとどうなるんですかね?」
日本人「いやぁ、よくわからないけど多分あそこに看板が下がっているから、乗り継ぎ方面別に振り分けられて、
乗り継ぎ客専用の指定ホテルに行くんじゃないかなぁ」
私「ええーっ!だって我々は市内のホテルを取ってあるんですよ」
日本人「えっ、そうなんですか、それはおかしいなぁ、もしかして何か間違われているかもしれないから、
係が来たら聞いたほうがいいですよ」
うーん。これはたいへんことになったぞ。前方を見ると確かに方面別に分かれた看板が下がっています。
これはまずい。どうしよう。しかし、係官が来るまではどうしようもありません。それからはいてもたってもいられぬ
思いで待ちました。
どれだけ待ったかようやく係官がパスポートを持って現れ、案の定方面別に誘導を始めました。
みんなそれぞれパスポートを返却され分かれていきます。間違われたのは我々だけか。うーむ。なんとも運が悪い。
と嘆いていてもしかたがないので、私たちは最後に係官のところへ行き、たどたどしい英語で冷や汗たらたらで
事情を説明しました、いや、しようと試みましたが、こちらもテンパってるせいかよく理解してもらえません。
しかし私たちのパスポートが手元にないこともあって、とにかく事務所で事情を説明するようにというようなことを
言われました。なんてことだ。
早速事務所へ行って見ます。ところがその中はものすごく混雑しています。おいおい、勘弁してくれ。と思いながらも、
とにかく事情を説明するしか他に道はないので列に並びます。とはいえ自分たちにもよくわからない状況を、
慌しく難しそうな顔をした係官に英語で説明するなんてかなり難易度高そう。どうすればいいんだと、
そうこう考えているうちに、私たちの番が回ってきました。
私「あっ、実は。。。パスポート。。。回収されて。。。間違われたようで。。。困ってます」
係官「は?パスポートをなくしたの?」
私「いや、なくしたわけではなくて、なんていうかその。。。」
係官「???。ちょっとそっちで待っててくれる」
ああ、やはりこういう結果に。悠長に待っている場合じゃないんだが。まいった。この旅は続けられる
のだろうか?このままパスポートが戻らなかったらどうなるんだろう?やはりここで説明しないと後がない!
言葉を整理してもう一度話をしてみることにします。さっきよりいっそう青い顔をして再び列に並んでいると、
前の方で一人の係官が私たちの方を見て手招きしています。えっ?なに?我々のこと?戸惑いながらも、
係官の目は明らかに私たちを見据えているので、ともかくそっちへ行って見ることにしました。
するとおもむろにパスポートを差し出し、
係官「これは君たちのものかな」
私「え?あっ、これは!そうですそうです。確かに私たちのものです。これがなくてとても困ってたんです。ありがとう」
係官「どういたしまして」
どーっと、安堵感。とにかくよかった。これで助かった。しばらくは込み上げる安堵感で笑顔が止まりませんでした。
しかしあとで冷静に考えてみると、係官の方が間違えたのになんで礼を言ってるんだ。少し腹立たしく感じつつも
緊張と不安から解放されたためか、どっと疲れが出てきました。早くホテルへ行こう。しかしハプニングはこれだけでは
終わりませんでした。