悪夢の4日間(おまけ)到着 -リスボン-
 ビッグトラブルのほうでご紹介しましたが、あのカーボベルデでの悪夢の4日間のその後のエピソードです。 まだそちらを読まれていない方は、そちらから読んでいただくとわかりやすいです。
 実はやっとのことでたどり着いたリスボンで、またちょっとしたハプニングがありました。
 カーボベルデでの悪夢の4日間の後、リスボンへ向けて機上の人となったときは、まるで地獄から生還したような 開放的な気分になっていました。そしてカーボベルデで絶望の淵にあったときにあれほど夢見たリスボンに到着。 サルのイミグレでの後遺症か入国審査では少し緊張しましたが、当然ながらスムーズに通過。あっという間に到着ロビーに 出ていました。飛行機が遅れたため、時刻はもう夜10時前です。
 A氏「さて、どうしよう。パリへのフライトは今日はもうないし」
 私「パリ行きは明日の朝か昼の便だね。今日はここで泊まるしかないね。それともまた空港のベンチでゴロ寝しようか」
ふと見ると、ロビーのはずれの方のベンチでは、数人の人が服を羽織ってゴロ寝しています。中には床に寝袋で寝ている バックパッカーのような人もいます。
 A氏「ハハハ、冗談はよそう。ここ何日か平穏に寝てないんだから、暖かいベッドで安心して寝たいよ」
 私「まあそうだね。正直くたくただし。どこか近くの宿を探そうか。でも、その前にエールフランスのチケットカウンター を確認していこうよ」
それは各航空会社のチケットカウンターが集まる一角にありすぐに見つかりましたが、当然今日はすでにクローズしていて 明日のオープンは朝6:15からと記されています。そこで明日朝一番でまた戻ってくることにして、本日の宿を探しに インフォメーションに向かいます。インフォメーションはまだオープンしていて、愛想のいいスタッフが対応してくれました。
 私「すみません。この近くのホテルを探してるんですが」
 スタッフ「残念ながらこの近くにはリーズナブルなホテルはございません。少し市心のほうに出ていただければお勧めの ホテルがございます」
といって市内地図を取り出し丁寧に説明してくれます。
 スタッフ「。。。では、このホテルはいかがですか。小さいけど清潔でリーズナブルでいいホテルですよ。 一部屋42ユーロです」
 私「そうですか。ではそこお願いします」
 スタッフ「わかりました。では今、ホテルに連絡しますね」
というわけで、本日のホテルは市心のポンパル広場に近いホテルになりました。スタッフに住所を記した紙をもらい、 教えてもらったとおりに空港前のバス停から市心方面に向かうバスに乗りこみます。
 ところがこのバス、多くの日本の乗り合いバス同様、降車時にはボタンを押す方式だったのですが、バス停のアナウンスや 表示がなにもありません。地元の人にとってはそれでも問題ないようですが、我々にはバスのルートはおろか、今どの辺りに いるのかも見当がつきません。さらに夜なので外の景色と地図を照らし合わせることも厳しいです。 唯一の頼りは私が以前訪れたときの記憶のみです。私は以前リスボンを訪れたとき、ポンパル広場周辺も散策していたので、 おぼろげながら周囲の様子は記憶していました。
 私「広場の近くまで来れば、たぶん見当はつくと思うんだけど。。。」
 A氏「頼むよ。おれはどんなところか知らないんで」
 私「あんまり当てにしないで、一応地図のチェックも頼むよ」
我々は眼を凝らして外の風景に集中していました。その甲斐あってか、バスがポンパル広場に入る少し手前の時点で現在の 居場所を確認。広場に差し掛かる少し手前のバス停で乗客が降車したあと、意気揚々と降車ボタンを押しました。
 私「ふう。さすがにちょっと焦ったけど何とか見つかってよかったね」
 A氏「ほんと。地図見てても全然わかんないし。まあ、とにかくよかった」
と話しているうちに、バスはポンパル広場に入ります。 ポンパル広場はパリの凱旋門のように大きなロータリー式の道路に なっていて、その中央にはポンパル公爵の像が建っています。そして像を挟むように広大なエドゥアルド7世公園と、 中心地区を結ぶリベルダーデ大通りが交わっています。
 さて、バス停はどのへんだろうと降りる準備をして眺めていましたが、バスはロータリーを大きく回りこんでリベルダーデ 大通りに入り、そのままスピードを上げてリスボンの中心バイシャ方面へと向かっていきます。 えっ!ちょっと。バス停は。。慌てて降車ボタンを確認しましたが、降車ランプは確かに点灯していて次に止まることを 示しています。そうしているうちにもバスはグングンとバイシャ方面へと下っていきます。おいおい。いったいどこまで行く んだ。早く止まってくれ。ホテルのあると思われる地区はとっくに過ぎ、バスはリベルダーデ大通りを大きくほぼ3ブロック ほど下ったところでようやく止まりました。そこのバス停で降りたのは我々のみです。
 私「まいったな。かなり来過ぎちゃったな。なんでこの間に限ってこんなにバス停が離れてんだよ」
 A氏「いきなりスピード上げてかっ飛ばすんだもんな」
 私「さて、ここからは歩いて戻るしかないね。とっとと行こう」
そのとき時間はもう夜の11時近くになっていました。橙色の街灯が規則正しく並ぶ人通りのなくなったリベルダーデ大通りを、 ポンパル広場に向けて超早足で戻ります。通りが広いだけに街灯の光がますます寂しさを醸し出しています。 お互い会話をする余裕もなく、半ば小走り気味に歩くこと10分、ようやくポンパル広場付近に戻ってきたときには、 二人とも息が切れていました。ここで地図を見てホテルの位置を確認します。ホテルはポンパル広場から碁盤目に広がる脇道を 何ブロックか入ったところにあるようです。さっそくそちらに向かいます。ところが。。。
 私「あれ、おかしいな。確かにこっちでいいはずなんだけどな」
A氏も地図とにらめっこしながら、
 A氏「うーん。こんなとき交番でもあればなぁ。もう一度戻って最初からチェックしてみようか」
行きつ戻りつしながら、いくら探してもホテルが見つかりません。すでに夜遅いため通りを歩く人も皆無で、 道を聞こうにも聞きようがありません。道に面した商店やレストランもクローズして閑散としています。困った。 これはどうしようもない。他に頼るすべがなく、ただひたすらうろついて自力で探すしか方法が思い浮かびませんでした。
 冬の夜にもかかわらず汗だくになって必死で探し回っていると、ふいに目の前のレストランの通用口扉が開き、店の人が ごみ袋を抱えて出てきました。やった。人だ。すかさずその人に歩み寄ると、インフォメーションのスタッフにもらったホテル の住所と名前の書いたメモを見せて道を尋ねます。
 私「すみません。ここへ行きたいのですが。。。」
 店員「なんたらかんたら。。。」
その店員はメモを見てすぐに、ポルトガル語で説明してくれました。話の内容は理解できませんでしたが、身振り手振りを 交えて説明してくれたのでなんとなく見当がつき、厚くお礼を言って教えてくれた方向へ向かいます。
 教えてくれた場所は、我々が一生懸命探していた通りから、さらに1つ右へ折れたところでした。その通りをしばらく進んで みると、あった!通りの先に一箇所だけ電光看板が点いているところがあります。それはまちがいなくメモに記されたホテルの 名前でした。よかった。我々は心の底からホッとしてホテルの中へと入っていきました。
 ホテルは聞いたとおり、狭いけどアットホームな雰囲気でフロントの人の対応もよく、6畳ほどのスペースしかないバーで お馴染みとなったサグレス(ビール)を買って、ようやくカーボベルデから帰還したささやかな祝杯を上げることができました。
 一難さってまた一難。カーボベルデでの危機を脱したと思ったら、またリスボンでこんなに焦る目に遭おうとは。。。 しかしハプニングはこれで終わりではありませんでした。翌日さらにまた緊張が我々を襲うとは。。。