悪夢の4日間(おまけ)出発 -リスボン-
 リスボン夜の大迷走を演じた翌日は、眠い目をこすりながらまだ暗い中、朝5時に起床しました。もちろんエールフランスのチケット カウンターにオープン一番で出向くためです。というのも、フライトスケジュールを調べたところ7:40にパリ行きの フライトがあり、もしこれに乗れればパリから東京行きの昼の便に間に合うためです。
 我々は身支度を整えてフロントに降り、清算を済ませた後タクシーを呼んでもらいました。フロント前の椅子に座って 待つこと数分でタクシーがやってきました。さすがに早朝は来るのが早いな。そう思いながらタクシーに乗り込みます。
 空港へ向かう途中ものすごい濃霧に見舞われ、まさに暗闇と白靄という最悪のコンディションの中、初老のドライバーがスピード を落とし目をまん丸にして注意深く走行します。これはけっこうすごいな。こんな状態でよく走れるもんだ。 と思いながらもなんとか空港へ到着。ドライバーに感謝です。手元の時間を見ると6時5分過ぎ。もう少しでチケット カウンターもオープンするはずなのでカウンターの前で待つことにします。
 ふと周囲を見ると、昨夜見かけたバックパッカー風の旅行者が、隅のほうでまだ寝袋に包まって寝ています。 我々もカーボベルデの空港で似たような体験をしてきたので、少し親近感を覚えます。もちろん状況はぜんぜん違うんで しょうが。
 私「さて、ここが最後の関門だね。ここでうまく交渉できれば、これ以上出費が増えずに済むんだけど」
 A氏「大丈夫かな。格安券だからなぁ。まあ、今回は最悪お金を払えば帰れるのでまだ気が楽だけど」
 私「まあね。でも、その前に話すだけ話してみよう」
などと話しながらオープンを待ちます。ところが。。。
目の前に掲げられたオープン時間の6:15を過ぎても、いっこうにオープンする気配がありません。あれ?どうなってんだ? などと考えながら、そわそわして待つことさらに5分、10分。。。うーん。そういえばカーボベルデでもTAPのスタッフが オープン時間過ぎても来ないなんてことがあったな。エールフランスのスタッフもそうなのか。
 A氏「ここでほんとに合ってるのか?この時間ってあてになるのかな?」
 私「どうなんだろ?でもボードにははっきりオープン時間が書いてあるし。でも、一応他も探してみるか」
 そこは見る限り明らかにAFのカウンターであるものの、じっとしておられず、他にエールフランスの関係施設がないか 探し回りはじめました。他の航空会社のカウンターでは、SATAエアーなどいくつかの航空会社はオープンしていますが、 ほとんどはまだクローズしています。クローズしている航空会社のところにも、それぞれオープンの時間が書いてありますが、 中にはエールフランス同様その時間を過ぎているところもあります。 いったいどうなってんだ。みんないいかげん過ぎるだろ。
 エールフランスを探し回る途中でフライト案内のモニターを見ると、我々が乗ろうと考えていた7:40のパリ行きの案内が すでに出始めています。ON TIMEで遅れなし。これはあまりもたもたしていられないぞ。早くチケットの相談をしないと。 そうだ。チェックインカウンターだ。あそこに行けばもうエールフランスのスタッフもいるだろう。しかしその前に他の フライトスケジュールにも目をやると、パリ行きの前にもたくさんのフライトが表示されていますが、すでに定刻を過ぎた フライトまでもON TIMEで表示されていたりします。うーん、ここの空港はどこまでもいいかげんだな。
 ということで急いでエールフランスのチェックインカウンターに行きました。が、しかし。。。
 誰もいない。。。そこにはスタッフはおろか乗客までも1人の姿も見えません。え?これはどういうこと?あと1時間 ちょっとで離陸だってのに。まさか、チェックインカウンターもまた別なところにあるとか。いや、そんなはずは。。
 すっかりうろたえた我々は、もう何をどうしていいのかわからずただ歩き回っていました。
 私「どうしよう。このままじゃ、朝の便は乗れないな。なんか、手はないか。うーん困った」
 A氏「うーん。こうなったらオープンしてる他の航空会社で聞いてみようか」
 私「うーん。。。」
結局、これといった案も浮かばず、それとなく航空会社のカウンターの集まる場所に戻ってきました。やはりエール フランスのカウンターはいぜんとしてクローズしたままです。A氏の言うようにオープンしている航空会社で聞いてみようか と思うものの、かなり混雑していてなかなか聞きづらい状況です。
 結局その場でしばらくボーッとしていましたが、そうこうするうちにとうとう7時を過ぎてしまいました。 まずい。こんなことをしていても解決しない。ということで意を決して再び探索開始です。といっても当てがあるわけ でもなく、また同じところを探し回るしか思いつきません。しかし、次にエールフランスのチェックインカウンターを 訪れると、そこにはなんとスタッフや乗客がいてチェックインが始まっていました。よかった。これでとにかく聞ける。
 3つほどあるカウンターはどこも乗客が列を作っていましたが、我々はチェックインするわけではないので、 1人しか待ちのないビジネスクラス以上のカウンターに並びます。やがてすぐに順番が回ってきてさっそくスタッフに 尋ねます。
 私「すみません。エールフランスのチケットカウンターがまだオープンしてないんですが、いつオープンするんですか? 7:40のフライトに乗りたいんですが」
 スタッフ「6時15分にオープンしますので、もう少しお待ちください」
 私「(時計を見せながら)いや、だってもうとっくに過ぎてるじゃないですか」
 スタッフ「は?まだ過ぎてませんよ。(スタッフの腕時計を見せながら)今は6時10分です。その時計は間違ってますよ」
えっ!はっ?どういうこと?
 スタッフの腕時計を見ると確かに6時10分近くをさしています。一方、自分の時計は7時10分。。。 ここで私はやっと悟りました。我々の時計が1時間進んでいることを。。。
 私「あれ?あ、ほんとだ!これはどうも。失礼しました。ハハハ」
そそくさと列の外側で待っているA氏のところに退散です。
 私「なんてこった。俺らの時計は1時間進んでるよ。おかげで恥をかいた。まったく頼むよ」
 A氏「えっ。あれ?そうなの?くそー、そうか、やられた。いや、すまんすまん」
これで今までこの空港はあまりにも時間にルーズだと思っていたことがすべて解決しました。時間にルーズだったのは 我々のほうでした。
 実は我々の時計の時刻は、A氏のワールドウォッチをもとにしていました。A氏のワールドウォッチはリスボンの時間表示 がないため、同一時間帯に属しそうな都市の時間をリスボンの時間とみなしていました。そこへ私が、昨晩リスボンに 着いたときA氏に時間を尋ね、A氏の教えてくれた時間を疑問も持たずに合わせていたため、二人とも昨夜からずっと1時間、 時間がずれた状態で過ごしてきたというわけです。
 つまりは昨夜、ホテルを探して歩き回っていた時間も、実際は我々が思っていたより1時間早かったわけで、 今朝も不必要に早く4時に起きて、眠い目をこすって空港へ来たというわけです。これまで時間に対しては何の疑問も持たず にいたので、敢えて他の時計を見ようともせず、人に時間を聞くということも思いもしませんでした。
 今回のハプニングは完全に我々の早とちりで、勝手に2人で焦って途方に暮れていたというお粗末さでした。
 ちなみにエールフランスのチケットカウンターは時間通り6:15にオープンし、我々は交渉した甲斐あって無事振替便を ゲット!パリ発の昼の東京行きは満席で取れませんでしたが夜の便を押さえ、リスボンからは希望通り7:40の便で飛び立つ ことになりました。すっかり安心しきった我々は、パリで時間ができたのでベルサイユ宮殿を見学し、街中で一杯やって すっかり上機嫌で帰国の途につきました。  もちろん、リスボンの空港もエールフランスのチケットカウンターも決して時間にルーズなことはありません。 我々の早とちりで勝手にぼやいてしまってすみません。