Ilulissatへ
今日はグリーンランド第3の町「Ilulissat」に行きます。Ilulissatへはグリーンランド航空の小型飛行機で向かいます。
私たちは朝8:55のGL500便に搭乗予定で、チェックインは8:00からと聞いていたので、よい席を確保しようと8:00
ちょっと前にカウンターへ出向きました。座席も2-2というのはわかっていましたが、通路側どうしになるのもいやなので、
とにかく座席だけは確保してしまおうという思惑です。
ところがいざチェックインカウンターへ行って見ると、お客さんは誰も見当たらず、カウンター内に係員の女性が1人
いるだけです。さっそくその係員の女性に聞いてみます。
私「Ilulissat行きのチェックインはもう出来ますか」
係員「ええ、大丈夫ですよ」
私「じゃあ、お願いします。窓側の禁煙席で」
係員「この便は全席自由席ですよ」
私「えっ、そうなんですか」
係員「ええ、今日は空いてるので大丈夫ですよ、はい、これがボーディングカードです」
と言って渡されたのが、番号の振ってある厚紙で出来た使い回しの1枚のカード。私たちはとりあえずホテルへ戻って
カフェテリアで朝食を取ることにします。バイキングスタイルの朝食を取りながら、
私「なんかこんなカード1枚じゃ飛行機の搭乗券というより、なんかの行列の整理券だね」
奥さん「ほんと、でもすごく簡単でいいね」
などと話をしていると、Tさんが食事に来られました。
Tさん「おはようございます。今日はIlulissatですね」
私「ええ、今チェックインをしてきました」
Tさん「あっ、そうですか。それはお役に立てなくてすみません」
私「あっ、いえいえ、とんでもない」
なんとTさんは私たちのチェックインのお世話までしてくれようと思っていたらしく、それで朝早めに降りてこられた
ようです。ありがたい話です。実はIlulissatへ行くのは、おなじみのメンバーの中では、私たち夫婦とLさんのみです。
そのLさんもチェックインを済ませてカフェテリアへやって来られました。あとは出発を待つのみです。
搭乗時間になり、Tさんに見送られて私たちとLさんは機内に乗りこみました。チェックインカウンターの女性が
言った通り、乗客はまばらでかなり空いています。
私「こんなに空いているんだったら、それぞれ窓側に座ろうよ」
奥さん「そうだね。そうしよう」
Lさんも私たちの後ろに席を確保します。こうしてわずか十数人の乗客を乗せた飛行機は軽々と離陸しました。
あっという間にKangerlussuaq上空高く上がり、私たちのホテルはもう豆粒です。外はもう9時過ぎだと言うのにまだ暗く、
どす黒い海と不気味に白く浮き出るように雪をかぶった大地との間に沿って、北へ向けて飛行して行きます。
私が窓外の風景に見とれていると、CAの女性がやってきて、
CAさん「どこまで行かれますか?Ilulissatですか?それともAasiaatですか」
と聞くので、Ilulissatですと答えると、
CAさん「じゃあこの機内誌を記念にお持ちかえりください」
と笑顔で言ってくれます。さらに座席のポケットにあった機内誌が使い古されているのを見ると、ちょっと待って
と言って新しいのを持ってきてくれました。こちらが聞いたわけでもないのに、なんて親切で愛想のいい人なんだろう、
グリーンランド航空は最高だ。などとすっかり上機嫌の私でした。そうこうしているうちに飛行時間45分であっという
まにIlulissat空港に到着です。
外はまだ暗い中、親切なCAさんにお別れの挨拶をして、Ilulissatの地を踏みました。
Ilulissat探訪その1
空港ロビーへ入るとさっそくガイドのSilverさんが私たちを迎えてくれました。Silverさんはとっても陽気な
イタリア人で、英語、フランス語も話せるので、私たちには英語、Lさんにはフランス語を用いていろいろ説明を
してくれます。
私たちは空港玄関外に止めてあったSilverさんのワゴン車でまずは町の探索に出発です。空港は町外れの
高台にあり町までは車で10分程度ですが、途中町が見渡せるポイントで撮影タイムを取ったりしてのんびり
町中へ向かいます。
Silverさん「今日はちょうど、町のお祭りの日なんだ。今年初めて太陽が顔を見せる日でね」
Silverさんの話では今日はIlulissatの初日の出祭?で、太陽が顔を出す頃にはみんな町外れの丘に上って
お祝いをするそうです。そんな話をしているうちに車は町中へと入ってきました。
Silverさん「ここはフィッシュファクトリーだよ」
と指差された建物は大きくて、中には近代的な加工機械が動いており、オートメーション化された工程で働く
人々が見えます。工場の前にはたくさんの漁船が停泊しており、漁業の盛んなグリーンランドの一面をデジカメに
収めようと車外にでたら、風がビュービュー。
私とLさん「ううっ、さ、寒い!」
氷点下20℃以下で、風がビュービュー吹いている世界に降り立つと、それはもう猛烈な寒さと冷たさが襲ってきます。
さすがに私とLさんは付近の写真を2,3枚撮ると、鼻水をすすり、涙ながらにそそくさと車内へ戻ります。
その後もSilverさんは車でゆっくりと町中を回り、警察署、裁判所、病院、教会などいろいろな施設を案内してくれました。
Silverさん「さあ、次はKnud Rasmussenの博物館に行こう。君らはKnud Rasmussenを知っているかい」
私「ええ、この町で生まれた有名な探検家でしょう」
Silverさん「おお、よく知ってるね。彼は偉大な探検家だよ。彼は、かくかくしかじか。。。」
などと話してはいるものの、実は私もグリーンランド行きが決まるまでは、ほとんど名前くらいしか知りませんでした。
多少の知識を付けておいてよかった。
博物館は3階まであり、Knud Rasmussen関連の他、イヌイットに関する展示物も多く、Silverさんがそれらを
1つずつ指しては熱心に説明してくれます。私も熱心にその説明に耳を傾けていると、
「ここにはスライドもあるので、そちらでより詳しく説明してあげよう」と言って、小さな映写室に案内してくれました。
それから約30分、私たちはIlulissatやイヌイットの生活について、Silver先生からみっちり講義を受けました。ありがたい。
興味津々、ランチはスーパーで
Knud Rasmussenの博物館を後にすると、さっそくSilverさんが私たちに尋ねます。
Silverさん「君たち、そろそろ腹が減らないか?レストランで食事でもするか、それともスーパーで何か買って、
町を見物しながら食べようか、どっちがいい?」
私と奥さん「うーん、どっちもいいな。Lさんはどっちがいい?」
Lさん「私はどっちでもいいよ。君たちにまかせるよ」
私と奥さん「うーん、じゃあグリーンランド料理は今晩ホテルのレストランで食べることになってるから、
スーパーと見物がいいかな。スーパーも見てみたいし」
Silverさん「よし、じゃあ今からスーパーに行こう。ちなみにこの町にはあそこに見えるチャイニーズレストランや、
ディスコまであるんだ、今度来たときにはこの町で泊まるといいよ」
ということで、スーパーに向かうことになりました。実は今晩Kangerlussuaqホテルのレストランでお馴染みメンバーで
グリーンランド料理を食べようと、Tさんに予約をしてもらっていたのです。
スーパーは思いのほか大きくて近代的で、郵便局が併設されていました。Silverさんはまず郵便局に入って行って
局員の人に挨拶を交わします。さっきから博物館の人はもとより、車で行き違う人にまで声をかけまくっていて、
この人はいったいどれだけ顔が広んだと今更ながら感心です。
スーパーの方は食料品はもちろん衣類や雑貨などなんでも揃っています。衣類は時期にもよるのでしょうが、
とても暖かそうなジャケットがいっぱい並んでいて触手が動きます。でもとりあえずは昼飯をということで、
惣菜コーナーでサンドウィッチを選び、飲み物は何にしようかといろいろ手に取って見るも、デンマーク語しか
書いてないのでよくわからないな、と選んでいると、パッケージのデザインからどうやらコーヒー牛乳の仲間らしき
ものが目に止まりました。まあこれでいいやとそれを取り出し、レジまで持って行こうとすると、それを見た
Silverさんがノーノーと手を振りながらやってきます。何がノーなのかわからず戸惑っていると、
Silverさん「そいつは飲めないよ」
私「えっ、これ、飲み物じゃないの?」
Silverさん「それはコーヒーに入れるクリームさ」
Lさんも含め、みんなに大笑いされてしまった私。ま、旅の恥はかきすてかきすて。
Ilulissat探訪その2
スーパーを出ると再び町の見学です。今度は犬ぞりで活躍する犬たちを見るため、たくさんの犬たちが暮らす
(飼われている)場所へやってきました。確かに広いエリアのあちこちに犬小屋が立てられ、たくさんの犬たちが
点在しています。さすがに犬といえども寒そうで、近場にいた子犬を見ると、前足に力を入れ後ろ足を地面から
上げた格好でたたずんでいます。犬にとっては大変だろうけど、その姿が愛らしくてついカメラをパチリ。
ふと目を上げると町外れの方から実際に犬ぞりを操ってやってくる人がいるのでまたまたパチリ。
その後新しく出来たという発電所や、海に浮かぶ氷山が望める場所、日の出をお祝いする丘など、さらにいくつかの
ビューポイントを回ったあと、Silverさんのお店でコーヒータイムです。Silverさんのお店は本当はおみやげなどを
売っているのですが、ちょうど改装中で今は休業しているということで、スタッフの改装作業を見ながら少し休憩です。
床には店の商品が無造作に置かれていて、もの珍しげにカヤックや毛皮などを眺めていると、Silverさんが熱い
カプチーノを入れて持ってきてくれて、商品の説明をしてくれます。
Silverさん「これはトナカイの毛皮なんだ。そうだ、これを羽織って写真でも撮ったらどう?」
私たち「あっ、撮りたい撮りたい」
Silverさん「よし、でもこれだけだとちょっと様にならないな。そうだ、この毛皮の帽子もかぶったほうがいい」
私たち「あっ、かぶるかぶる」
Silverさん「じゃあ、ついでにこのライフルも手にもって、それから。。」
Silverさんの店で休んだ後は、すぐ近くにあるIlulissat Tourist Serviceでおみやげタイムです。売られているものは
毛皮製品や牙製品、ソープストーンの置物、イヌイットの民芸品をはじめ、おなじみのグリーンランドロゴ入りの衣類、
グリーンランド関連の書籍などなど。ただしどれも結構なお値段で、特に毛皮製品や牙製品などはかなり高価です。
私「うーん。いろいろ面白そうなものはたくさんあるけど、どれもけっこう高いね」
奥さん「ほんと、ほんと。これじゃあ友達のお土産がかえなーい」
などと言っていると、Lさんがやってきて、
Lさん「ほら、日本語で書かれたパンフレットがあったよ」
私「おお、ありがとう、Lさん。ところでLさんはおみやげは何も買わないの?」
Lさん「私のおみやげはこのカメラの中にあるさ」
私「なるほど、確かにその通り。私のおみやげもこのデジカメの中にあるさ」
と言いつつ、グリーンランドの地図帳とロゴ入りトレーナーをしっかり買いこみました。
名残惜しい別れの帰路
心ゆくまで買い物を楽しんだ後、再びSilverさんのお店に戻ると、
Silverさん「さて、それじゃあ、そろそろ空港へ行こうか。でもまだ少し時間もあるのでいくつか撮影ポイントを
回りながら行こう」
ということで再びワゴン車に乗りこみ出発です。途中、さらに犬ぞりや町の風景を撮影できるスポットを回り、
今朝到着した町外れの空港にやってきました。空港に到着するとすぐに、Silverさんがみんなの航空券を集め、
チェックインをしてくれます。相変わらずチェックインカウンターの女性や、その近くの小さなカウンターバーで
ビールを飲んでいる人に声をかけ、一言二言会話を交わしています。うーん。やはりすごく顔の広い人だ。
Silverさんは戻ってくるとみんなに搭乗券を渡し、
Silverさん「今日は楽しかったかい?」
私たち「ええ、とっても。この町がすっかり気に入ったよ」
Silverさん「じゃあ今度来るときはここに滞在するといい。この町には立派なホテルもあるんだ。そしたら
もっといろいろ案内するよ」
私たち「ちょうど今そう考えていたところなんだ。その時はお願いします」
などと話をし、Silverさんと記念撮影をして、いよいよお別れです。
Silverさん「じゃあ、これでお別れだ。みんな帰ったらぜひ私に手紙をくれないか。これは私の住所だ」
といって私たちに名刺を差し出します。
Silverさん「下にメールアドレスも書いてあるから、そちらでもいいから必ず頼むよ」
といってみんなに握手をして去って行きました。
私「とても楽しい人だったな。よし帰ったらメールを出そう」
奥さん「そうだね、でも英文で手紙かけるの?」
私「・・・・」
帰りのグリーンランド航空のCAさんもまたいい人で、窓外の風景を撮ろうとカメラを構えているとトントンと
肩をたたかれ、「そこは翼が入るから、こちらの席からのほうがよく撮れますよ」などと案内してくれました。
行きと違って帰りは周囲も明るく下の地形もよく眺められるので、景色に見とれているとあっという間に
Kangerlussuaqに到着です。
飛行機を降りておなじみの空港ロビーに入ると、Tさんが迎えてくれました。
Tさん「お帰りなさい。どうでしたか、Ilulissatは?」
私たち「いやぁ、とても楽しかったですよ。Silverさんもおもしろい人だし」
この後しばらくロビーのソファにもたれて思い出話に花が咲いたことは言うまでもありません。