グリーンランド

内陸氷河見学ツアー

内陸氷河へ向かう途中の荒涼とした風景
 今日はトムさんの運転する4WDで内陸氷河を見に行くことになっています。少し遅めの朝食を済ませたあと、 10時にロビーで待ち合わせです。参加者は私たちの他に、ガイドのTさん、Mさん、そしてフランス人のLさんです。
 Lさん「おはよう、みなさん。昨日はホテルの周りで北極キツネを7匹見たよ」
 私「えっ、Lさん、7匹も見たの。私は3匹しか見えなかった。代わりに夜オーロラが見えたけど」
 Mさん「えっ、昨日見えたの。しまった。私も注意してたのに見過ごしちゃった」
ちなみにLさんは野生動物がお目当てで、Mさんはオーロラがお目当てということでグリーンランドに来た方々です。
 そんな話をしているうちにトムさんがやってきて出発。車は日本製の4WD、2台で行くことになりました。 1台はトムさんのチーフのGreenland Tourismの女性スタッフの方が運転です。 最初は基地時代米軍が敷設したという比較的快適な?道路を飛ばします。
 トムさん「このあたりは米軍が作ったレーダーや見張り小屋が残ってるんだ」などと運転しながら指差して 教えてくれます。トムさんはガイドのTさんもいるせいか、ちょっと複雑なことを説明するときはデンマーク語で 話をするため、Tさんはそれを日本語と英語に通訳するので大変そうです。
 やがて車は米軍の道路から外れ、いきなり両脇に草木が迫った斜面を走り出しました。ここはもう道ではないので 車は縦へ横へと大揺れで車内はもう大騒ぎです。
 みんな「きゃー、ごつん!痛て!」
 トムさん「ははは、楽しいだろ」
 みんな「トムさん大丈夫?重い人が斜面の下側に乗ってるよ」
 トムさん「ははは、心配ないよ。日本車は性能がいいから」
 みんな「いや、そういう問題じゃなくて。。。」
なんとか斜面は脱したものの、その後も道のない凍てついた大地を飛ばすため、体全体が宙に浮くほどの大揺れで、 車体を押さえる両手は汗ばんでいます。しばらくその状態で走り、ようやく走行にもなれてきた頃、視界の開けた 荒涼とした場所で休憩となりました。

カリブー発見

凍てついた平原でちょっと休息
 私はもともと4WDでのオフロード走行は好きなほうなので、慣れてくるとトムさんのワイルドな走行を楽しめる ようになり、このあとも楽しみだななどと思いながら車を降りると、たちまちまたあの刺すような空気が体に 染み込んできます。そこは凍ってバリバリになった雪に覆われた広い平原のようなところで、 その周囲にはグリーンランドでよく見られる急峻な丘が取り巻いています。
 こんなところに置き去りになったらアウトだななどと思いながら周囲を散策していると、トムさんが双眼鏡を 持ってやってきて、丘の上を指しながらあそこにカリブーがいるといいます。双眼鏡を借りて見てみると、いました! アラスカでも見たあのカリブーが丘の上に悠々と立っています。ふと横を見るとさすがはLさん、 大きな望遠レンズを付けたカメラでバシバシとカリブーを撮っています。
 私「Lさん、いい写真とれた?」
 Lさん「ああ、さっき来る途中にもトナカイやライチョウがいたね。これからも楽しみだ」
 さすがはLさん。野生動物の発見は鋭い。

感動!青く広大な内陸氷河

内陸氷河の一端
 再びワイルドなオフロード走行で氷河を目指してひた走ります。でも私たちはもうかなり慣れてきたので、逆にみんな ポンポンと飛び跳ねるのを楽しんでいます。
 トムさん「普通なら川経由で氷河の方に回りこむのだけど、今年は暖冬で完全に凍っていない可能性があるので、 あの丘を超えて行こう」
と言ってそれまで走っていた氷原からいきなりハンドルを左に切って、丘を上り始めました。これまでにもまして みんなの跳ねが大きくなった上に、そのまま転げ落ちるんじゃないかというほど車体が大きく傾いて、斜面の下側に なった人が押しつぶされそうになりながら「グワッ」、「キャー」。でも聞こえてくる声はなぜか楽しそう!
 そうこうしているうちに車は丘の上までやってきました。トムさんようやく車を止めて前を指差します。 その方向を見ると、2つの丘の谷間を埋めるように青白い氷河が大きな迫力でこちらに迫ってくるように見えました。 みんなカメラを手に車から降ります。  Lさん「すまないけど、氷河をバックに写真を撮ってくれないか」
 私「OK。Lさん。はい、チーズ」
 奥さん「私たちも撮ってもらおうよ」
 私「そうだね。Lさんお願い」
という感じで、みんなこぞって写真を撮っていると、
 トムさん「もっと近くまで行こう」
 みんな「おお、それはうれしい。ぜひぜひ」
ということで再び車に乗りこみます。近づくにつれてぐんぐん氷河が大きさを増して、私たちの方に迫ってきます。 氷河の先端部分まで来たとき、トムさんが再び車を止めて、
 トムさん「もう少し先の広場まで行くけど、よかったらここから歩いて行ってもいいよ。歩いても4,5分だから」
と言います。私はいろんな角度からじっくりとこの氷河を観察し、写真を撮りたいと思っていたので喜んでそうすること にしました。するとそう思っていたのは他の人も同じらしくみんな車を降りて歩き出しました。 ほんの10mくらいのところに青白くて大きな氷河が広がっているのはすごい迫力!でもここは風もあってものすごく寒い!

氷河の真横で熱いコーヒーを!

散策の途中で撮った動物の糞
車の待機している広場へ向かって歩いている途中、動物の糞のようなものがところどころにたくさんありました。 ここへ来る途中しばしば見かけたトナカイの糞だろうか?こんな寒い餌も少なそうなところでも、しっかり生きている なんて生命力の強い動物だなあなどと感動しながら、トムさんたちの待つ広場に着きました。
 トムさん「寒かっただろう、ここに熱いコーヒーとビスケットがあるから、どうぞ」
 私たち「おお、めちゃめちゃ寒かったのでありがたい。頂きます」
私たちは刺すような寒風にさらされてすっかり体が冷え切っていたので、トムさんたちが用意してくれた熱いコーヒーに 救われました。
 トムさんが、このあたりは夏は草も生い茂り、けっこう暖かくなるんだ。だから氷河を見ながらバーベキューなんて ツアーもあるんだなどと、デンマーク語で説明してくれているのを、すかさず横でTさんが通訳してくれます。 夏場は氷河の先端が崩れ落ちるところも見えるかもしれないそうで、こりゃまた夏来るしかないな、 などと1人で考えていると、車の中から奥さんが呼びかけています。
 奥さん「もう少しビスケット取ってえーー」
もともと寒がりの奥さんはあまりの寒さに車の中に退避です。

帰路の思いがけないハプニング

タイヤが雪に埋もれて動けない!
 十分氷河を堪能した帰り、トムさんは行きにも増して猛スピードで雪原の上を飛ばします。しかも行きに通った経路 と違って、より雪深い雪原の上を気持ちよく走行します。車の揺れは行き以上に大きいのですが、私たちはもうかなり オフロード走行に慣れたので、みんな楽しんでいます。
 そんなとき、車がちょっとスピードダウンをしたなと思ったら、たちまち車輪が滑り出し、あっという間にその場 から前進できなくなってしまいました。トムさんもギアをバックに入れ換えたりして、なんとか勢いでその場から 脱出しようと試みましたが、タイヤはむなしく空回りし、いっそう深みにはまってしまいます。
 私たち「トムさん、外へ出て押しましょうか」
 トムさん「なあに、心配ない。よくあることさ」
などと言って、トムさん、しばらく頑張っていましたが、自力ではどうにもならないと判断したのか、後方からやって 来たもう一台のチーフの女性が運転する車にかけより何やら相談しています。私たちは後ろの車も雪にはまったら どうするんだろうと心配しながらも、車から降りて、のん気にこのハプニングを写真に収めています。
 Lさん「すまないけど、車をバックに私を写してくれないかな」
 私「いいよ、Lさん。次は私も写して」
などとほんとにのん気なものです。トムさんは話が済むと再び戻ってきて車に積んであったロープを取り出しています。 どうやら後ろの車とロープで繋いで引っ張り出そうということのようです。
 私「トムさん、大丈夫?」
 トムさん「なあに心配ない。これでうまく行かなければ、無線で呼べばいいさ」
と言って笑っています。私たちを安心させるためか、それともほんとうに心配していないのかはわかりませんが、 とにかく前後の車をロープで結んで脱出作戦が始まりました。その間私たちは相変わらず外で写真を撮りながら 成り行きを見守ります。
 しばらく何度か勢いを付けて引っ張っていると、ようやく車は後ろに滑りながらも脱出に成功しました。 よかった!こんなところに立往生なんて洒落にならない。その後今度は後ろの車が雪にはまるというハプニングも ありましたが、女性ドライバーの見事な運転により自力で脱出し、無事帰りつくことができました。

オーロラナイトツアー

オーロラ待機する湖畔ロッジ
 今宵は天気も快晴、オーロラ観測には絶好のチャンスです。ということで私たちはまたまたトムさんの案内で、 近くの湖のほとりのロッジへオーロラ観測に行くことになりました。
 車は旧米軍基地を抜け、橋を渡り山の中へ。。。たどりついたところはほんとうに人口の光がまったくない 暗闇の場所です。空には星が非常にきれいに輝いています。この星を見るだけでも一見の価値ありです。
 トムさんが大きな懐中電灯で足元を照らしてくれながらロッジへ入ります。中へ入るとトムさんはてきぱきと ろうそくに火を灯し、暖炉に火を入れ、テーブルには熱いコーヒーとクジラの皮やタラの珍味系などのおつまみを 並べてくれました。私たちはそれらを囲んでおしゃべりをしながら、時折外へ出てはオーロラを確認します。 参加者はすっかりおなじみになったメンバーなので最初から和気あいあいです。
 Mさんはオーロラが目当てでいらした方なので、撮影機材は重装備で万全の体制です。LさんもMさんの隣に 三脚を設置し、オーロラを待ちます。というよりは最初からうっすらとしたのはすでに出ているのですが、 やはり目当てはパンフレットに載っているような、美しくカーテン状にうごめくきれいなオーロラです。 トムさんの話では今日はかなり期待できそう!

オーロラ再び

 しかし待てども待てどもなかなか私たちが望む美しいオーロラは姿を見せません。みんなの顔にもしだいに 諦めの表情が現れ始めました。
 Mさん「うーん、今日はもうだめかなぁ」
 みんな「そうだなあ、さっきからずっと変化がないからなぁ」
 Mさん「一度でいいからきれいなの現れないかなぁ」
そんなやり取りを見ていたトムさんが、みんなの残念そうな表情に同情してくれた様子で、滞在中にオーロラの 出そうなときはいつでも協力させてもらいましょうと申し出てくれました。それを聞いてみんな「トムさんありがとう」 と感謝しながらも、せっかく来たのだからあと30分くらい待ってみようということになりました。
 それ以降トムさんはみんなに美しいオーロラを見せたいためか、頻繁に外へ出て確認をしてくれていましたが、 しばらくすると急いでロッジに入ってきて、みんなはやく外へと急かします。言われるままに外へ出てみると、 さっきまでの薄い帯状のオーロラとは一転して、薄緑色でカーテン上に大きく揺れるオーロラが 目に飛び込んできました。
 みんな「うわぁー、すごいすごい!ほら、あそこ。揺れながら広がってるよ!」
などと、口々に叫びながら全員の目はオーロラにくぎ付けです。MさんとLさんはさっそく寒さも忘れて写真撮影です。
 揺れながら絶えず形を変えるオーロラは、やがて天頂から放射状に広がり、揺れている部分では時折色を緑から赤に 変えながら、また新たな方向へと広がって行きます。
 トムさん「これはすごい。今まで何回もここへオーロラを見に来てるけどこれほどすごいのが出たのは初めてだ」 確かにそれはまさにパンフレットに載っている写真そのもの、いやそれ以上に美しいのではないかと思えるものでした。
 しかし悲しいことに私たちはコンデジしか持っていないので、頭上で繰り広げられるショーを写真に収めることが出来ず (実際はデジカメで挑戦はしましたが、バルブの設定機能がないので全滅でした)残念。 でも、MさんとLさんは、フィルムを何本か使われて手応えがあったようです。
 Mさん「帰っていいのが撮れてたら送るね」
ありがとう、Mさん。