ぼったくりタクシー -ソウル-
 それは仕事でソウルに行ったときのことでした。滞在期間が約2週間と、私としては比較的長い海外出張で、 そのとき私はちょうどソウル滞在一週間を迎えていました。その日の夜は、現地の関連会社の若手社員(韓国人)と 街へ飲みに出かけました。久しぶりに学生気分に戻って真露のいっき飲みをし、そのあとカラオケでリストにあった日本の歌 を歌って屋台でまた一杯。いいかげんベロベロに酔っ払って来た頃、明日も仕事なのでそろそろお開きにしようということ になり、私はその場で別れてタクシーを拾いホテルに向かいました。
 タクシーに乗り込むと外での会話を聞いていたのか(若手社員は片言の日本語が話せる)運転手はすぐに私が 日本人だとわかり、とてもフレンドリーに片言の日本語で話しかけてきました。
 運転手「コンニチハ、アナタニホンジン?ソウルハタノシイネ」
 私「そうだね」
 運転手「コレカラワタシ、マチヲアンナイスルヨ。モットタノシイトコロ、イッパイアルカラネ」
時間はもう夜11時過ぎ、けっこう酔っ払って疲れていた私は、一刻も早くベッドで横になりたい気分だったので、
 私「いやいや、すぐにホテルへ行ってくれない」
 運転手「マダジカンハヤイ、モットアソボウ」
 私「いや、今日はもう十分遊んで疲れたから。それより早くホテルへ行って」
 運転手「ジャア、マチヲマワリナガラ、ホテルヘイコウ。ダイジョウブ、シンパイナイ」
とまぁ、強引に市内を回りながら説明を始めました。しかしそのとき、さりげなく料金メーターを書類で隠すのを、 私はしっかりと見てしまった。こいつは、うさん臭い!
 私「ちょっと、なぜ、料金のところを隠すの?」
 運転手「アア、コレハタイシタコトジャナイ。ダイジョウブ、シンパイシナイデ」
こいつは思いっきりあやしい。というよりまずぼったくりだろう。こんなやつとは早く縁を切らねば。と心の中で考え、  私「もういいよ。ここで降ろしてくれ」
 運転手「ドウシタ?イマカラ、タノシイトコロ、アンナイスルヨ」
 私「早くホテルへ行きたいと言ってるだろ。行けないんなら別のタクシー拾うから」
 運転手「。。。ワカッタ。ジャアホテルヘイコウ」
ということでようやくホテルへ向かいます。
 やっとのことでホテルの前に到着。私はこのとき、もうこの運転手はぼったくりだと確信していたので、 相手がどう出るかと待ち構えていました。酒の影響と疲れもあって頭に来ていたので、心はけっこう強気です。 運転手はおもむろに料金メーターを隠していた書類をどけて、料金はこれだと指をさします。そこには。。。
 言うまでもなく予想通りの法外な料金が表示されていました。私はそれまで何度も現地の関連会社の人とタクシーに 乗っていたので、だいたいの相場はわかっていました。メーターには深夜料金を考えても、無茶苦茶な金額が表示されて います。おいおい。これは運転手も開き直ったか!などと考えながら、
 私「なんだ、この料金は。無茶苦茶だろ」
 運転手「コレハフツウノリョウキン。ミンナコノクライハラウヨ」
 私「タクシーは何度も利用して相場はもうわかってるの。騙せないよ」
 運転手「ゼンゼンタカクナイ。コレフツウ」
全く話にならない!そのとき私は、困ったときには電話をと、現地の人に渡されていた連絡先の書いた紙を思いだし、
 私「ちょっとホテルまで付いて来てくれ」
といって車を降り、ホテルへ入りました。
 私「今から、地元の知り合いをここへ呼ぶから。それから話し合おう」
 運転手「モウオソイカラ、ヨブノヨクナイ。ワカッタ。ジャア、トクベツハンガクデイイヨ」
おいおい。なんだそりゃ。地元の知り合いを呼ぶと言ったとたんに、いっきに半額か!
 私「半額にしたって高すぎるだろ。とにかく電話をするから、ちょっとそこで待っててくれないか」
 運転手「ワタシモイソガシイカラ、アマリマテナイ。ジャア、イクライクラ(金額を言う)デイイカラ」
という感じで、まるで露店での客と店主の駆け引きです。
 しばらくそんな感じでホテルのロビーで言い合っていましたが、それでもまだけっこう高い金額を言っているので、
 私「とにかく電話して、どこどこ(タクシーを乗った場所)からホテルまでのだいたいの相場を聞くことにする」
 運転手「コノリョウキンハ、ツウジョウノリョウキンニ、アンナイリョウトチップガハイッテイルンダ」
 私「そんな話は初耳だぞ。それに案内など頼んではいない。それに最初のあの無茶苦茶な金額はなんだったんだ」
 運転手「ホントウハアノキンガク。キョウハトクベツダイサービス」
なんと厚顔無恥なやつだ。頼みもしないのに無理やり街を引きずりまわして、無茶苦茶な料金吹っかけて、 大サービスとは。そのくせまだかなり高いし。。。そこで私は、
 私「わかった。その半額払おう、それで不服なら今から電話するから3人で話し合おう」
といって、お金を渡しました。すると運転手は(このころはもう、本性剥き出しの表情で)、
 運転手「コレジャ、チップガナイ。マチヲアンナイシタンダカラ、チップホシイ」
と言っていきなりわめき出しました。しかし私はそのときも強気だったので、
 私「わかった。じゃあとにかく電話して3人で話そう。電話だからそんなに時間はかからない」
と言ってロビーにあった公衆電話の受話器を取ろうとすると、運転手はホテルのスタッフに向かって、何か私に対する ののしりの言葉を叫んでいるようでしたが(韓国語なのでよくわからない)、しばらくしてあきらめたのか運転手は ぶつぶつ言いながら去っていきました。
 後日、関連会社の社員にこのことを話すと、繁華街を流してるタクシーはそういう悪質なのもそれなりにいると のこと。それならあのとき進言してくれればと思ったものの、お互いかなり酔ってたからしかたないか。