悪夢の4日間(4日目) -カーボベルデ-
 4日目の朝、まさかここで4日目の朝を迎えるとは。しかし一晩寝たことでだいぶ落ち着きを取り戻した我々は、 昨夜はシャワーも浴びずにベッドに倒れこんでしまったので、まずは起きてすぐシャワーを浴びます。 水しか出ない冷たいシャワーを浴びすっきりしたところで、ベッドに座ってA氏と今日の予定について話し合います。
 私「今日こそは絶対にここを出よう。もうイミグレの問題は解決したんだしね」
 A氏「そうだね。でも東京行きの便が心配だなぁ。今日も満席の可能性だって十分あるよね」
 私「それで考えたんだけど、空席の可能性に賭けて待ってたらいつになるかわからないので、もう振替でなくても いいから行ける所までどんどん進むというのはどうかな」
 A氏「つまり、チケットを新規に買い直してってこと?うーん、お金はけっこうかかりそうだね」
 私「でも、いつ帰れるかわからない状態でここで待ち続けるってのも嫌じゃない?正直すぐにでもここ出たいし」
 A氏「それはそうだ。またイミグレの気が変わったら今度こそ終わりだし」
 私「でしょ。それに発給ミスとはいえビザだって券面上もうすぐ切れるし、それでまた言いがかり付けて足止め されたら最悪だし。ダカール経由でチケット取り直すことに比べればましでしょ」
A氏「そうだね。そうしよう。とにかくリスボンまでは早く出よう」
話がまとまりさっそく行動開始です。まずは今日のリスボン行きのフライトスケジュールを確認します。 すると、いつもの深夜2時のフライトに加えて、今日は昼間の2時50分のフライトもあります。ただしこちらは カーボベルデ航空の便のようです。まあ、どうせ金出してチケット買うならどの航空会社でもいいか。少しでも早い便 にしよう。
 ということで準備を整えてお世話になっている旅行会社のオフィスへ向かうことにします。とりあえずLさんたちに 我々の考えを伝えて相談しなければ。相変わらずフロントにはいつものおじさんが座っていて、この人いったいいつ 休んでるんだろう?と思いながらも、これでお別れと思うと少し寂しくなります。清算を済ませて外へ出ると、 いつも通りすぐにタクシーが声を掛けて来たので、それに乗り込み空港に向かいます。
 オフィスには昨日夜中にサポートしてくれたEさんやガイドのJさんの姿は見られませんでしたが、マネージャーの LさんやスタッフのSさんがいました。
 Lさん「おはよう。昨日は残念だったわね。今日またあとでリクエスト入れておくから。もう一度やってみましょう」
 私「それなんですが、実は今朝2人で話し合って、とりあえずリスボンまで一刻も早く出たいということになりました。 で、今日は14:50にフライトがあるようなので、すみませんが今からそれを予約することはできませんか?」
 Lさん「その便だとエールフランスが確定できないので振り替えれないのよ。それにその便はカーボベルデ航空なので、 TAP(ポルトガル航空)の部分の振り替えも難しいかもしれないわよ」
 私「お金はかかっても構いませんので。リスボンまで行けばあとは自分らでなんとかしますので」
と言って、例の発給ミスのビザの有効期限で心配していることなどを話しました。すると、
 Lさん「そう。わかったわ。じゃあ14:50の便を手配しましょう。でも、もしかしたらあなたたちの持ってるチケットで リスボンまでは振り替えられるかもしれないので、ちょっと聞いてみましょう」
と言うとさっそくカーボベルデ航空のオフィスに電話をして、その件を聞いてくれました。完全にお金を払ってチケットを 買うことを考えていましたが、もしかしたらリスボンまでは振り替えられるかもしれないということになりちょっと期待 します。つくづくLさんはいい人だなと思いながら返事を待っていると、やがて電話を終えたLさんが、
 Lさん「今からカーボベルデ航空のオフィスに行ってちょうだい。ミスSがあなたたちをヘルプするわ」
ということで、さっそく斜め向かいにあるカーボベルデ航空のオフィスへSさんといっしょに出向きます。 我々には事情が飲み込めていないので、ここはSさんにお任せするしかなく、Sさんが我々の航空券を見せながら窓口嬢と 話し合っているのを後ろで見守るばかりです。
 Sさんは話を終えるとチケットを返して説明してくれました。
 Sさん「よかったわ。なんとかリスボンまでは振り替えられそうですよ。空席もあるそうです。ただし、チケットにTAPの スタンプがいるみたい。TAPのオフィスは14:00にならないと開かないからそれまで待っていてください」
 我々「そうですか。よかった。ありがとうございます。でも、14:00というのはフライトの時間まであまり時間がないですが 大丈夫ですかね?」
 Sさん「大丈夫。心配いりませんよ。ここは空港内ですから」
14:00というのはちょっと忙しない気がするが、まあSさんが大丈夫と言ってるから大丈夫なんだろう。時間はまだ11:00、 約3時間の待ちです。こんなに待ち時間があるなら、とっとと手配を済ませてしまいたいところですがしかたない。 もはや待つことには慣れっこになっていたので、例によってカフェレストランで、軽い昼食でも取りながら時間をつぶす ことにしました。
 私「とりあえずリスボンまではチケットを買い直さずに行けそうだね。よかったよ」
 A氏「当初は買う覚悟をしてたからね。問題はそのあとのエールフランス便だね」
 私「それはリスボンに着いてからだね。とりあえずエールフランスのオフィスで交渉してみよう」
などと話しながら、お気に入りのメニューである地元のライスを使ったスープ(安くてうまい人気メニュー!)を食べます。
1時半ころ再び旅行会社のオフィスに戻り、隣のTAPのオフィスがオープンするのを待ちます。この空港のオフィスは、 たいていどこも通路側は全面ガラス張りなので、TAPのオフィス入口は旅行会社オフィスからも見ることができます。 オフィス内のソファに座ってまだかまだかとその入り口をたえず注視していましたが、ついに14:00を過ぎてもいっこうに スタッフが現れる気配はありません。しだいに焦りが出てきて、前のデスクで仕事をしているLさんに尋ねました。
 我々「Lさん、もう14:00過ぎたけど大丈夫ですかね。まだTAPの人来ないみたいですけど」
 Lさん「うん。ちょっと遅いわね。でもまだ大丈夫よ。もう来ると思うわ」
そう言いながらLさんもTAPオフィスをちらちらと見ながら気にしてくれています。スタッフの遅刻でフライトを逃した なんて笑い話にもならんぞ。TAPのスタッフは何やってんだ。などといらいらしながら待つことさらに数分、 14時を7,8分過ぎたころようやくスタッフが現れました。助かった、今ならまだ間に合いそうだな。と思いながら、 Lさんとともに隣のオフィスへ行きます。
 ここでもLさんがすべて手配をしてくれたので、我々はただ後ろで様子を見ながら待つばかりです。 Lさんは流暢なポルトガル語で(当たり前ですが)テキパキとスタッフ相手に手続きを進め、あっという間にTAPの スタンプ入りの航空券を返してくれました。さあ、ここからは時間の勝負です。
 Lさん「さあ、これでOKよ。チェックインしに行きましょう。私が最後までサポートするわ」
といって3人足早にチェックインカウンターに向かいます。Lさんが最後までサポートしてくれるなんて心強いな。 今日はJさんがいなくて最後のお礼とお別れを言えなかったのが唯一心残りだな。などと考えていたらあっという間に チェックインです。3日前と同様、カウンターのスタッフに「よい旅を」と言われ搭乗券を受け取り、いよいよ緊張の イミグレーションです。もう問題ないと言われていても、あれだけ強固な態度を取り続けていたイミグレなので、 やはりいざパスポートを出すときには緊張感が走りますが、今日はすぐ横にLさんがいるのでちょっと安心です。
 イミグレのオフィサーは、我々と一戦を交えた何人かのオフィサーではなく、見たことのない知らない人でした。 ホッとしたような残念なような。。。もしあのときのオフィサーであれば、どんな顔をするか見届けてやりたい気持ちも あったんですが。
 緊張した面持ちでパスポートを提示したとき、Lさんが横から何やら口添えしてくれましたが、オフィサーは特に問題ない といった態度で、今回は特にパスポートの中を確認することもせずに出国スタンプを押してくれました。 あっけない終結。今までのあの態度はなんだったんだ。しかしこの結果が得られたのも、常に言葉では言い表せないほど 尽力してくれた現地旅行会社スタッフの皆さんと、日本でサポートしてくれた旅行会社の方々、そして我々を側面から 支えてくれた現地の人たちのおかげです。サポートしてくれたすべての人に感謝!
 最後に、たいへんお世話になった皆さんを代表して、Lさんに何度も何度も厚いお礼を言って搭乗口へと向かいました。
 まだリスボンから先は未定の状態で完全に問題が解決したわけではありませんが、カーボベルデを出られるということが 信じられないくらいの嬉しさでした。この4日間を振り返ってみると、初日は空港で野宿状態まで追いやられ、何度も 絶望の淵に叩き落されたりしましたが、それゆえに生涯忘れない思い出の地ともなりました。いつの日かまたカーボベルデを 訪れて、今度は最後まで観光客としてこの思い出の地を振り返りたいものです。ただし、次に行くときはリスボンから 入国しなければ。
 余談ですが、搭乗予定のリスボン行きフライトは、機材到着遅れのため1時間以上もDELAYとなり、結局搭乗口付近で またしばらく待ちとなりました。もう待つのはコリゴリ!