バッグ消失事件 -アラスカ-
 それは冬のアラスカ、北米最北端の町バローで起きました。
 私たちは前日からバローに滞在し、その日は午後遅くの飛行機でアンカレジへ帰る予定に なっていました。そこで午前中はホテルのフロントへ荷物を預けて親切なイヌイットのにいちゃんの 案内で町巡りに出かけました。バローは最北の小さな町なので、半日もあればほとんどすべてを 見て回れます。
 私たちはまだ暗い中(バローの冬は日中でもほとんどの時間暗い)、ポイントバロー や市役所ホール、白熊の毛皮を売っている店などを回り、テリヤキハウスという日本食の店でランチを とりホテルへ戻りました。ホテルでは前夜からフロントで対応をしているおじさんが、 笑顔で迎えてくれます。
 おじさん「お帰り、町めぐりはどうだった?」
 私たち「うん、楽しかったよ」
 おじさん「そりゃよかった。まだ飛行機まで時間があるから、よかったら部屋で休むかい」
 私たち「いいの?ありがとう」
というわけで、お言葉に甘えて部屋へ行こうとして、ふと朝方荷物を預けた場所を見ると、 そこには私たちの仲間の荷物がまだ置いてあります。が、よく見るとなぜか私の荷物だけ見あたりません。 周囲も探してみましたが、やはりどこにもありません。ん?あれ?なんとなく胸騒ぎがして、 フロントのおじさんに、
 私「おじさん、朝預けた私の荷物が見当たらないんだけど」
 おじさん「だいじょうぶ、ちゃんとここに。。。えーと、確かグレーのスーツケースだったよね。 ちょっとまってよ。えーと」
おじさん、しっかりしてよ!頼むよ!不安が込み上げてきます。しばらくしておじさんが、
 おじさん「あっ、今朝ここに置いた荷物だよね。もしかして。。。ちょっとそこで待っててくれる」
といって電話を取りました。不安に駆られながらしばらく待っていると、電話を終えたおじさんが 私を呼んで、
 おじさん「どうも君の荷物を午前に発った日本人の荷物と間違えて空港に運んでしまったようだ。 で、その荷物は飛行機に積まれて飛び立ってしまったらしい」
 私「ええっ!そんな、それじゃどうすればいいの」
 おじさん「ただその飛行機の行き先はラッキーなことにアンカレジなんだ。君らもこれから アンカレジへ向かうんだろ。だから向こうへ着いたら事務所で荷物を受け取れるようにしておくから。 いや、ほんとよかった」
いや、おじさんラッキーでもなんでもないよ。でもまあ、とりあえず荷物の行方がわかったのと、 おじさんの対応がよかったので少し安心です。それにしても持ち主のいない荷物がどうして飛行機に 積まれるんだ。って感じですね。
 おじさんはその後いろいろと電話をかけて調整してくれたようで、その後の経過についても逐次 電話をもらえることになりました。私はしかたなく部屋で電話を待つことになりましたが、 実際に状況がわかるまではなんとなくそわそわします。結局、アンカレジの係員からつたない日本語で 無事荷物を預かりましたと電話を受け一件落着でしたが、所持品紛失系のトラブルはこれが初めて だったのでかなり焦りました。その後はアンカレジまで、私だけ手ぶらで行けて楽でしたが。